満願寺 女性がキーワード

 法勝寺のこととか

満願寺(まんがんじ)のある辺りは、「岡崎法勝寺町(ほっしょうじちょう)」という地名です。昔、法勝寺というとても大きなお寺がありました。法勝寺は、平安時代の承保3年(1076年)に白河上皇が、関白藤原師実(ふじわらのもろざね:頼道の六男)から別荘地を譲られて建立した大寺院でした。高さ約80mの八角九重塔とかがあったそうです。康永元年(1342年)の火災のあと荒廃し、今では僅かに寺跡を示す石碑や、九重塔の跡(動物園の中にある)などが残っているだけです。

満願寺は岡崎の妙見山と言われ、天慶3年(940年)、菅原道真公の乳母・多治比文子(たじひのあやこ)が、夢に現れた道真公の託宣を受けて、北野朝日寺(今の朝日山東向観音寺)の僧最鎮を開祖に、西ノ京に一堂を建立し、道真公が自作した天満大自在天像を安置したのが創建といわれています。道真公の御霊が「示現」して願いが成就したことから、山号を「菅原道真公の霊の示現」から「示現山」としました。

当初は真言宗でしたが、元禄10年(1697年)、日蓮宗に改宗するとともに現在地に移転しました。

満願寺にある「妙見菩薩像」は、亀に乗って、右手に剣、左手に鎌首をもたげている蛇を持っています。もともとは法勝寺の塔頭・本光寺にあったのですが、江戸時代に焼失した後、満願寺に遷されたそうです。この妙見菩薩像は、「洛陽十二支妙見めぐり」の5番、「岡崎の妙見さん」とも呼ばれています。

「洛陽十二支妙見めぐり」というのは、江戸時代に京都御所の紫宸殿を中心に十二支の方角に、妙見菩薩像を祀ったことに始まります。この十二のお寺を順番に参拝して、開運や厄除けを祈願することが流行りました。満願寺は京都御所から見て十二支の辰(東南東)の方角にあたります。

「洛陽十二支妙見めぐり」は、明治時代の廃仏毀釈の影響で一時衰退しましたが、昭和61年(1986年)、京都の日蓮宗のお寺を中心として「洛陽十二支妙見会」が発足して、現代に復活しました。現在の十二の寺院は、江戸時代とは大半が入れ替わっているようです。少し調べましたが、通常時は非公開のお寺もあり、いつでも参拝できるとは限らないようです。

満願寺

夕暮れ時に訪れたので、画像に影が入りだす時間で、なかなか撮影がうまく行きません。

満願寺 No2

山門です。

満願寺 No3

山門の横には石碑があるのですが、とても立派な字で書かれています。

満願寺 No4

「示現山」なかなかコントラストに差があって難しいです。何とか見えますね。

満願寺 No5

本堂です。

満願寺 No6

本堂正面。どっしりとした立派な作りです。

満願寺 No7

満願寺 No8

満願寺 No9

このお寺にはたくさんの石碑があります。

満願寺 No11

「俊寛僧都故居之碑」
俊寛僧都(しゅんかんそうず)は、後白河法皇の側近で法勝寺執行でした。安元3年(1177年)、藤原成親(ふじわらのなりつね)・西光らの平氏打倒の陰謀に加わって鹿ヶ谷(ししがたに)の俊寛の山荘で密議が行われたのですが、多田行綱(ただゆきつな)の密告により陰謀は露見してしまいます。俊寛は藤原成経・平康頼(たいらのやすより)と共に薩摩国鬼界ヶ島へ配流されてしまい、そこで生涯を終えます。歴史で出てくる「鹿ケ谷の陰謀」です。

満願寺 No10

手水鉢に何か彫られているのですが、消えかかっていて読めません。

阿伽井天と閼伽井

満願寺の境内の一角に「阿伽井天」があり、さらにその傍に「閼伽井(あかい)」があります。「閼伽井」は、法勝寺の井戸とされ俊寛の荒行井戸といわれています。

満願寺 No12

満願寺 No13

満願寺 No14

「閼伽井」です。現在は汲水できないようです。

俊寛はここで荒行を修めていたそうですが、藤原成親が酒の相手に遣わした「鶴の前」に心奪われ恋仲となり、陰謀に加担してしまうという、ちょっとちょろい坊さんです。

一緒に配流になった成経と康頼は千本の卒塔婆を作り海に流すことを発心しますが、俊寛はこれには加わりませんでした。やがて一本の卒塔婆が安芸国厳島に流れ着き、 これに心を打たれた平清盛は、高倉天皇の中宮となっている娘の徳子の安産祈願の恩赦を行い、成経と康頼のみが赦されますが、俊寛は謀議の張本人という理由から赦されず島に一人とり残されました。

溝口健二の碑

女性映画の巨匠と呼ばれる映画監督、溝口健二の碑があります。

満願寺 No15

私は映画には疎いのですが、黒澤明らと並ぶ国際的に高い評価を受けた映画監督だそうです。

満願寺 No16

多治比文子や俊寛、溝口健二にしても「女性」がキーワードになる人が縁のある満願寺です。岡崎の静かな住宅街で、桜がとてもきれいなところなのですが、あまり知られていない隠れスポットです。シーズンに訪れてみてください。

アクセス

  • 京都市バス「岡崎道」下車、徒歩5分
  • 京都市バス「法勝寺町」下車、徒歩5分

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