賀茂波爾神社(赤の宮) ちょっと離れた下鴨神社?

古代、京都にはいろいろな技能集団が住んでいた

今日は「高野」に鎮座する神社を紹介しましょう。

「賀茂波爾神社」といいます。

読めませんね。でも、そのままです。「かもはにじんじゃ」です。京都人でも読めない人は多いです。日頃あまり目にしない漢字ですからね。ひらがなで書いてあっても「かにはも神社」って読んでしまいそうです。バチ当たりですけど。通称は「赤の宮」。こっちの方がなじみ深い名称です。

で、場所なんですけど、「高野橋東詰」からまだ東の方なんですよ。京都市内は東西南北に沿って碁盤の目に道が走ってるって言いますね。でも北大路通りは「高木町」から東の方は、「高野川」の流れに沿って道ができているので、市内の中心部のように東西南北にはなっていません。ただし、井桁状にはなっているので、道を間違うことはないと思います。

「高野橋東詰」から東に向かって歩きます。(正確には南東方向)すると、すぐに「左京郵便局」があります。(バス停は左京郵便局の真ん前です。)

んで、「左京郵便局」の東側の通りを北に進みます。(正確には北東方向)

そのまま、北東方向(比叡山の方向)に進んでいくと、「赤の宮」の前に出ます。疏水の北側です。

賀茂波爾神社_赤の宮 No2

日ごろの行いのおかげか(ウソつけ)、訪れた日もいいお天気でした。真っ赤な鳥居が迎えてくれます。

賀茂波爾神社_赤の宮 No3

ご由緒書きがあるのですが、ちょっと見にくいかな。

かいつまんで紹介しますと、「賀茂波爾神社」は「賀茂御祖神社(下鴨神社)」の境外摂社で第四摂社にあたります。

ご祭神は「波爾安日子神」「波爾安日女神」の二柱。

創建は不明ですが、「延喜式神名帳」に「賀茂波爾神社二座」とあり、延喜年間以前から鎮座していたと考えられるそうです。

さて、問題の「波爾」ですが、一番に思い浮かぶのはやはり「埴輪」ですよね。神餞を奉るときに使う土器を作っていた「西埿部氏」や「土師氏」の氏神を祀っていたので、土を意味する「埴」から「波爾」に転訛したという説があるそうです。それから、近くを流れる「高野川」は流域で祭器に使う赤土(はに)が産出したので平安時代に「埴川」と呼ばれていたそうです。ここからついたという説もあります。どちらにせよ、「赤土」が社名の由来のようですね。

古代においては、祭器として用いられた土器を焼くのは大陸からの技術を継承していた技能集団。その豪族たちが、祭器にちょうど良い埴の産出するこの流域に住んでいたのでしょう。時代の流れと共に赤土で作る土器は廃れていけど、信仰だけが後々の世まで守られて現在に至っています。

それと通称の「赤の宮」ですが、赤土からこの名前がついたとか、元禄時代に勧請された「権九郎稲荷」の朱塗りからついたとか言われています。

そして明治10年に政府の命によって「赤の宮」は神社名を「賀茂波爾神社」と改め、「賀茂御祖神社」の境外摂社となりました。

賀茂波爾神社_赤の宮 No4

「官幣大社賀茂御祖神社攝社 賀茂波爾神社」と刻まれた立派な石柱。ということで、「下鴨神社(賀茂御祖神社:かもみおやじんじゃ)」の摂社であることがはっきりとわかりますね。でも、下鴨神社からは高野川を越えてけっこうな距離があります。徒歩ですと20分ぐらいはかかります。

賀茂波爾神社_赤の宮 No5

ささ、鳥居をくぐってお詣りしましょう。 どん突きは社務所です。本殿は左手の方に曲がった方向にあります。

賀茂波爾神社_赤の宮 No6

左に曲がると拝殿が見えます。端正なたたずまいの拝殿ですね。

賀茂波爾神社_赤の宮 No7

ちょっと見にくいですが、瓦に二葉葵の社紋が見えますよ。

賀茂波爾神社_赤の宮 No8

社幕にも二葉葵の御紋。

賀茂波爾神社_赤の宮 No9

注連縄で囲われた結界。神事が行われる神聖な場所なのでしょう。

賀茂波爾神社_赤の宮 No10

拝殿の横を通って本殿前です。

賀茂波爾神社_赤の宮 No11

おお、この雰囲気。古さを感じさせますね。

賀茂波爾神社_赤の宮 No12

きらびやかさはありませんが、白木で作られたお社は神域を感じさせます。

賀茂波爾神社_赤の宮 No13

恐れ多くて真正面には立てません。結果、写真の水平が出てませんね。すんません。

賀茂波爾神社_赤の宮 No14

お社の横には巨石があります。

さて、神様にお詣りするということ以外に、この「賀茂波爾神社」と庶民の接点があります。

賀茂波爾神社_赤の宮 No15

それがこの井戸「波爾井」です。

賀茂波爾神社_赤の宮 No16

「波爾井 御神水」の駒札。神饌用の土器とともにここから湧き出る清水を御供水として奉っていたそうです。

賀茂波爾神社_赤の宮 No17

ちょろちょろと流れています。

賀茂波爾神社_赤の宮 No18

ポンプでくみ上げられている井戸水です。この「波爾井」の水は飲用可です。

賀茂波爾神社_赤の宮 No19

手水も「波爾井」と同じ水なのでしょう。

もう一ヵ所、神社にお詣りします。

賀茂波爾神社_赤の宮 No20

本殿の東側に真っ赤な鳥居が連なっています。

賀茂波爾神社_赤の宮 No21

お稲荷さんの千本鳥居みたいですね。

賀茂波爾神社_赤の宮 No22

「権九郎稲荷大神」の神額です。

賀茂波爾神社_赤の宮 No23

一番奥のどん突き右に鎮座しています。

賀茂波爾神社_赤の宮 No24

後光がまぶしいですよ。

賀茂波爾神社_赤の宮 No25

ご神鏡が見えます。

この朱色を見ると「赤の宮」とついたのも、さもありなんと思わせる鮮やかさです。私が訪れたのは2月末。すこし温かみを感じる日差しが心地よい日でした。同じ時間にお詣りされている方はいらっしゃいませんでしたが、波爾井の水が流れ、静かな中にも連綿と続く信仰の息吹が感じられる神社でした。

京都の中心街からは離れていますが、市バスの循環系統の路線からはすぐのところです。近くに来ることがあれば一度お詣りしてみてください。

アクセス

  • 京都市バス「高野橋東詰」下車、徒歩7分

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