神ノ木弁財天 嵐電沿線

災害もある

京都市右京区の交通には欠かせない嵐電(京福電気鉄道嵐山本線)ですが、その沿線には昔からの人々の生活が続いています。嵐電に乗って外の景色を見ていると、大きな通りの路面電車として走る区間よりも、家の軒先をかすめて走るような、こじんまりとした区間の方が長いことがわかります。

そんな嵐電の沿線には昔からの神社仏閣や景勝地があるので、観光の方の利用も多いです。有名どころはさておき、今回はガイドブックには絶対載らないようなローカルなところです。

昔は「山城国葛野郡生田(おいた)村」と呼ばれた地域であり、現在の「嵯峨野神ノ木町」にある「神ノ木弁財天」に参詣します。

「海老名庄左衛門」の子孫である「海老名正次郎」の書による「神ノ木弁財天」の社伝によると、今をさかのぼる三百数十年前、「生田村」に庄屋の「海老名庄左衛門」という男が住んでいました。「庄左衛門」は当時の比叡山「無動寺」の官長から木像の「弁財天像」を授けられ、家宝として祀り、毎日手を合わせて拝んでいたのです。

そして次代の「庄左衛門」の時に、その夢枕に「弁財天」が現れました。目を覚ました「庄左衛門」が神棚の木像を見ると、「弁財天像」の指が三本折れていました。

「これは不思議なことだが一大事。家宝の弁財様を修理しなくては。」

「庄左衛門」は、「弁財天像」を近くの寺で払い清め、修理の前の「お性根抜き」を嵯峨の「徳林寺」法主に依頼し、その後、中京辺りの仏師のところに弁才天像を持っていきました。ところがその仏師は、魂を抜かれたと思えない弁才天像の霊験灼かな様子に驚いて修理を断わってしまいます。「庄左衛門」は、再び「弁才天像」を持ち帰り、今度は「大本山天龍寺」の官長に「お性根抜き」をお願いし、以前の仏師に修復を依頼しました。仏師は今度は快く修復を引き受けたそうです。

仏師によって修復された弁才天像は再び神棚の元の位置に祀られました。しかし、その後、神ノ木に遷座したいという夢のお告げがあり、明治22年(1889年)に、生田村の「安井仙之助」という人の尽力により、地主であった「北村利一郎」から私有地を寄進され、「神ノ木弁財天」と称して現在の地に祀られました。

「神ノ木弁財天」は「健康増進」「除災招福」等に信仰が深まり、大正時代には「神春龍神」を「神ノ木地神」として合祀しました。

ここまでが「神ノ木弁財天」の歴史なのですが、昨年大変なことが起こりました。

平成29年(2017年)10月23日の台風21号の影響によって、境内にあった榎の大木のうち一本が倒木してしまい、祠の前にあった石鳥居と木製の赤鳥居が破損し、嵐電の敷地内まで入って架線に寄りかかり、嵐電がしばらく運休となってしまいました。もともと樹齢300年超とされる、高さ20mの榎の大木が4本あり、右京区民の誇りの木に指定されていたのですが、災害予防のためにすべて切られてしまいました。

神ノ木弁財天 No2

「神ノ木弁財天」の東側にある細い道の嵐電踏切です。私はこちらからアプローチしました。

神ノ木弁財天 No3

踏切から東を見ますと、線路は複線ですが、一般の家の「まぁ裏」にあたります。フェンスもありません。裏口出たらすぐ線路。おぉっ。

神ノ木弁財天 No4

西側を望みます。少し向こうに「有栖川駅」が小さく見えています。

神ノ木弁財天 No5

行き違いが来ましたよ。どっちも一両での運転ですね。

神ノ木弁財天 No6

ぐるっと回って、「神ノ木弁財天」を目指します。このあたりはこんな狭い道ばかりです。

神ノ木弁財天 No7

やってきました「神ノ木弁財天」です。

神ノ木弁財天 No8

他の方のBlogではこんもりとした森のように榎の大木が移っているのいるのですが、現在はこんな感じです。

神ノ木弁財天 No9

「神ノ木弁財天」の石票です。

神ノ木弁財天 No10

たぶんご由緒書きだと思うのですが、さびていて見えませんね。

神ノ木弁財天 No11

榎の大木があった名残です。

神ノ木弁財天 No12

平成29年の台風21号で倒壊した石鳥居と木製の鳥居の名残です。

神ノ木弁財天 No13

祠は大丈夫だったようですね。

神ノ木弁財天 No14

お詣りしましょう。

神ノ木弁財天 No15

「神ノ木龍神」と「神春龍神」です。

神ノ木弁財天 No16

仲良く並んでいますね。

その地域の歴史の中で起こった出来事が語り継がれることから信仰が始まります。そして神社がまつられると、代々ご由緒や変遷が語り継がれるのですが、地域のつながりが薄れてしまうと、その継承が途絶えることもあります。そうならないためにも、ご由緒や変遷はもとより、昔話や寓話も記録として残してほしいですね。

アクセス

  • 京都市バス「生田口」下車、徒歩3分

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